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「さうか。うちの方では山車だしを引いて出るさうだ。それから、みんな紋付に羽織袴といふことだの」
房一の老父、道平が二三日前に倒れたのだつた。そして、今、練吉に対診を求めて来たのである。
「何かね、わしがどうしたといふんかね」
「なに、ろくでもない用事で帰つたもんですから、どこへも失礼していたんです」
「訴訟があるさうで、面倒なことですな」
尿には蛋白質はなかつた。排便を顕微鏡でのぞいてみた。いる、いる。蛔虫に十二指腸虫の卵がうんとこさ見えた。
と後を追ふと、徳次は
「お前、往診に出てた?」
「どうぞよろしくお願ひします」
「やつぱり、あんただつた」
「お忘れかもしれませんが、高間道平の息子でございます。――今度、医者としてこの町へ戻りました者で――」
「どこだ、どこだ。もう消えたのか」
「それあ、あつさりしていゝですな。こつちでは山車が生憎あいにくこはれて、満足なのは一つしかないんでね。あんまり淋しいからと云ふんで、こんな思ひつきをやらかしたらしいですがね」